白濱滯在記 一
「円月島」二〇一六年十二月五日撮影
十二月頭から年明けまでを白濱ですごしました。此處は夏になると活氣に滿ち溢れ娛しい街になるのでせうが、僕はしづかな海を視たかつたので、この季節に訪づれてよかつたと思つてゐます。
「江津良より田邊灣を望む」
メインのビーチである白良濱もいゝですが、江津良海水浴場へに途次に見える田邊灣の景色もよかつたですね。これは白濱に來てすぐ撮つたものですが、初めて視るその海の美しさはとても印象的でした。
「江津良」
白良濱から円月島へ行く途中に「白濱漁協」や「白濱朝市」があるこの波止場があります。この邊りからは「円月島」がよく見えます。此處の雰圍氣はいゝですよ。
「白濱漁協邊り」
同じ場所であつても時のうつろひのなかで空も海も劇的に表情を變へますね。
「白良濱にて」
これは白良濱で撮つたもので、左手に「ホテルシーモア」が見えます。
雲閒から射す光がうつくしい。
「三段壁にて南を望む」
「三段壁」にも行きましたが、この日は曇りで景色はあまりよくなかつたです。寒かつたなあ......
白濱では海を眺めてゐると、彼方にかうして洋上をゆるやかに船が往來するのがいつも見えます。
金色の光につゝまれ、海の壯士たちは何を懷つてゐるのでせうか。
“人生の爭鬪に疲れ果てた靈魂にとつて、港は魅力のある住居だ。天空の廣さ、雲の動いてゆく建築、海の移り變る彩色、燈臺の閃き、これらは斷じて眼を疲らすことなく樂しませるのに不思議なほど適してゐるプリズムだ。複雜な艤裝をした船舶のすらりとした姿は、大浪のうねりが階調的な蕩搖を傳へて、靈魂に律動と美との風趣を支へるに役立つてゐる。そして殊に、もはや好奇心も野心も持たぬ者にとつては、望樓の中に橫臥はり或は防波堤の上に肱をついて、船出する人人や歸來する人人や、なほ未だ意志の力を、旅に出ようとか富を獲得しようとかいふ欲望を持つてゐる人人の、右往左往する動きを觀望してゐるのは、一種の神祕的な貴族的な快樂がある。”(『港』ボオドレエル 鈴木信太郞譯)
白濱滯在中に讀んでゐた『ボオドレエル詩集』にある詩です。「大浪のうねりが階調的な蕩遙を傳へて、靈魂に律動と美との風趣を支へる」といふところがすばらしい。
ドラマティックな空を背に悠々と飛ぶ鳥。
ではまた次囘!