陰翳禮讃
“が、美と云ふものは常に生活の實際から發達するもので、暗い部屋に住むことを餘儀なくされたわれ/\の先祖は、いつしか陰翳のうちに、美を發見し、やがては美の目的に添ふやうに陰翳を利用するに至つた。事實、日本座敷の美は全く陰翳の濃淡に依つて生まれてゐるので、それ以外に何もない。西洋人が日本座敷を見てその簡素なのに驚き、唯灰色の壁があるばかりで何の裝飾もないと云ふ風に感じるのは、彼等としてはいかさま尤もであるけれども、それは陰翳の謎を解しないからである。”(『陰翳禮讃』谷崎潤一郎)
陰翳、そのうちに日本美あり。
厠、座敷、蒔絵、漆器などについて考察し、また西洋人と日本人の照明(光)に對する感覺のちがひについても種々と書かれてゐます。比較文化論として今日に於いてもとても興味深いものだと思ひます。
谷崎さんのかういふ日本文化についての文章好きだなあ。