蒼井 悠人

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第28話:『日本美術論』(金原省吾)を讀む(7)

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『日本美術論』(金原省吾)の「第七章 表現の老境性」を朗讀してゐます。

“現はれてゐる小なるものの中に、その小を拡大し、その小と交替して来る様様の性質をふくむ表現が日本の表現の姿である。盆栽の小樹が大樹として、はては森林風景として拡大して行く力は、このまま日本のすべての表現に共通する性質である。表現形を具體的に小にし、是と交替するものを反對定立的に大にする処に、表現の姿が成り立つ。この事は日本の文學に於いても、漸次に表現形を小さくして行く經過に見ることが出来る。日本の美學が、その基礎をこの老境と具體的小の問題に置いてゐることは注意すべきである。”

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金原省吾(1888〜1958)
『日本美術論』(金原省吾)

第27話:『日本美術論』(金原省吾)を讀む(6)

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『日本美術論』(金原省吾)の「第六章 石の藝術」を朗讀してゐます。

“篆刻に於ける石の藝術的性質は、その重さと餘白との二つの点にあつた。石の有する重さを文字の上にもあらはし、石自らの上にも呼びさますのが、その第一の點である、文字の表現と、その餘白とに於いて、餘白の意味が表現の中にも入り込んで、餘白的性質と、表現的性質とにおいて、餘白的性質が表現的性質を呼びおこし、表現的性質が餘白的性質を呼びおこし、相互に滲透しつつ對立した。これが第二の点であつた。この不思議な存在の仕方の上に、篆刻の美はあつた。これがまた同様の形で庭石の上にあらはれてゐる。”

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金原省吾(1888〜1958)
『日本美術論』(金原省吾)

第24話:『日本美術論』(金原省吾)を讀む(5)

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『日本美術論』(金原省吾)の「第五章 日本画の論理」を朗讀してゐます。

“東洋の畫は、霧の中にある形體として考へ得る。形は霧によつて細部を消され、角を消されて、一つの省略體となる。 物と物との關係に於いては、遠いものは消失し、そこは餘白となる。個物形體的に言へば、省略形體であり、畫面形體的にいへば、餘白形體である。 この濕度の與へる形體の變成は、日本の畫面形體の形成に露はな影響を与へ、これ迄の畫面形體は多少とも、霧による變形作用をうけて成立してゐる。そしてこれ迄の變成形體は、色彩の變成によつて成立した水墨の系統中に入り、この餘白と省略とが、水墨或は水墨中心の組織で表現される。これが風土的な日本畫の形成作用である。”

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金原省吾(1888〜1958)
『日本美術論』(金原省吾)

第20話:『日本美術論』(金原省吾)を讀む(3)

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『日本美術論』(金原省吾)の「第三章 日本美術の性格」を朗讀してゐます。

“しからばこの静けさの成立は、如何なる形においてなされるか。それには第一に或る騒がしさが存在しなくてはならぬ。しかし騒がしさだけでは静けさにならない、第二にその騒がしさが消失しなくてはならぬ。はじめからの静寂は言はば死に果てた静寂である。騒がしさの後に來る靜寂でなくてはならぬ。故に第三にはその騒がしさの消失した狀態の中に猶以前の騒がしさが感じられその狀態が持續しなくてはならぬ。”

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金原省吾(1888〜1958)
『日本美術論』(金原省吾)

第19話:『日本美術論』(金原省吾)を讀む(2)

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『日本美術論』(金原省吾)の「第二章 日本美術の形成」を朗讀してゐます。

“日本が明瞭な歴史を持つた千五百年以來の歳月は、日本人がこの日本の土に住みついて、石器時代の生活をはじめた歲月よりも遙かに短かいと考へられる。日本人の祖先は金属器時代に入つてはじめてこの國土に現れ、先住民族を駆逐して日本の國家を立てたのではない。石器時代からこの國土に住み、この自然と親しみ、主として菜食型の生活を営み、和順なる日を送つたものと想像せられる。埴輪は石器時代後の形成であるが、その顔がおだやかで朗かであることは、當時の生活の狀態を示すものであり、同様なるこの性質は、すべての工作品に示され、他國の技術攝受の上にもあらはれてゐる。日本の今日の文化の基礎は、かかる上代の遺物の中から旣に發見せられ、他國の模倣によつて得られたもので無いことが知られる。ここに前述の繩紋土器文様の系統の發達し得なかつた理由がある。されば吾等はこの上代遺物の中に、日本文化の性格源泉を明かに見得るのである。”

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金原省吾(1888〜1958)
『日本美術論』(金原省吾)

第17話:『日本美術論』(金原省吾)を讀む(1)

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『日本美術論』(金原省吾)の「第一章 日本文化の構造」を朗讀してゐます。

“日本の着物の形は實に脆い。坐作進退によつて變る。しかしこのくづれやすい着物の形が美しいのである。步幅を小さく步く時と、步幅を大きく步く時とで、步幅によつて着物の裾の開きもちがひ、風がふくと裾は亂れ、車の乘り降りにもまた亂れる。かういふ脆さが日本の着物の美しさである。”

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金原省吾(1888〜1958)
『日本美術論』(金原省吾)

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